ロードスターの比較対象となるクルマといえば真っ先に思いつくのはトヨタ86/BRZですが、スポーツカーというのは嗜好が極端に分かれるため思ったよりも販売が競合しないようです。
それどころか「父親からおさがりでマセラティをもらった大学生が、自分には大きすぎるという理由でロードスターを購入していった」という事例もあるそうで、スーパーカーのあり溢れるパワーを持て余してストレスに感じるくらいなら、いっそ気軽に振り回せるロードスターの方が良いという人も少なからずいる点では、言いようによってはフェラーリのコンペティオーネですら競合車になりうるかもしれません。
(ドライバーズカーとしての魅力はロードスターのほうが優位な状態で)
むしろモデルチェンジのたびに旧型と比較されるだけでなく、初代ロードスターの部品供給再開とリフレッシュプランを発表し話題になるなど、何百万円もかけてまで初代NA型をレストアする愛好家も存在するあたり、ロードスターの最大のライバルはロードスター自身、ましてや伝説となった初代NA型は新型にとっては永遠のライバルであり続けるでしょう。
現在ではマツダの方針としてロードスターに限らずマツダ車は原則、値引き販売はしないそうです。
むしろ注目すべきは、むしろ無理にフルラインナップで規模を大きくするよりも、ニッチな需要を満たすことに注力し、自宅にマツダ車があるというだけで自宅の景観のステイタスが上がる事まで意識した「魂動デザイン」やコンパクトカーやSUVまでドライバビリティやハンドリングの愉しさを追求した「ZOOMZOOM」といったコンセプトで、見事にプレミアムカーメーカーに転身したことでしょう。
安売り依存による利益率の低下や新興国の台頭を考えると、「良いものは高い」というプレミアム路線は、終わらない消耗戦の安売り競争から脱却するモデルケースとなりうるかもしれません。
さて5段階評価です。
外観5
デザインは文句なしの5です。
ロングノーズに峰のあるフェンダーラインは古典的スポーツカーデザインの現代的解釈ともいえるでしょう。
またマツダはいつまでも古びる事のない「タイムレスデザイン」をという概念を提唱しており、陳腐化させることで買い替えを促すという従来のマーケティング手法から脱却し、長年にわたって愛着を持つことが出来るという意味でも成熟したデザインといえるでしょう。
内装5
外観と同様、文句の付け所がありません。
独立3連メーター風のインパネやオプションでイタリアのアルカンターラの皮張り内装まで選択できるなど、外見のデザインはもちろん、各種スイッチ類の配置や視認性を含めてよくできています。
走り4
ノーマル状態でのバランスが良すぎて、スポーツカーなのに普通に乗る分には乗用車と変わらないくらい乗りやすいという、ちょっとひねくれた理由で4にしました。
完全バランスのノーマルの良さを愉しむもよし、豊富なオプションとカスタマイズパーツでパワーアップを図るもよし、購入したオーナーの皆さんの好みで「走りの評価5」のロードスターを作り上げてください。
エンジン5
むしろエンジンを買って付属品にタイヤとシャシーが付いてると言っても良いくらいでしょう。
スポーツカーに限らず「自動車を買う」という行為は少なからず「エンジンを買う」という行為かもしれません。
しかし近年はエンジンカバーを大きくしエンジンを隠す傾向が多く、昔RX-8のエンジンルームを見たときに樹脂製カバーが付いてるのを見たときは「マツダのRXを買う人はクルマではなくロータリーエンジンが欲しいという事がわかってない」と憤慨したことがあるのですが、ロードスターは昔ながらのアルミダイカスト製ヘッドカーを採用するなど、あえてエンジンを見せるという憎い演出までしています。
乗り心地5
意外かもしれませんが、乗り心地は悪くありません。
スポーツカーと言えども額に汗を流しながらハードサスで暴れるシャシーを押さえつけるというのはもう遠い過去の話です。
むしろ完全50:50の重量配分に低くホイールベース中央にある着座位置に、適度に締め上げられたサスペンション等、面白い物でスポーツカーも究極を求めると案外、乗りやすくて快適なものになるものです。
安全装備3
もう、これだけはどうしようもないのですが、オープンボディのスポーツカーである以上、安全上多少のリスクが伴うのは仕方がありません。
しかし、周囲の状況によってヘッドライトのローハイや配光の切り替えを行うアダプティブLEDヘッドライトや、車線逸脱警報システム、坂道発進が苦手な方にはありがたいヒルローンチシステムなど安全装備自体は充実しています。
燃費5
スポーツカーが燃費が悪いというのもまた過去の話です。
一滴のガソリンでどこまで効率よくパワーを引き出せるかという点においては、エコカーもスポーツカーも同じ、むしろコンパクトカー並みの軽量ボディに、1.5Lスカイアクティブエンジンの組み合わせで、カタログ値17km/L以上の燃費を実現しています。
実燃費は最低でも12km/L以上、乗り方によっては15km/L以上を叩き出すという話もあります。
価格4
スポーツカーに限らず年々、自動車の販売価格は上昇しており、初代が200~250万円だったことを思えば、249,48~327,6万円というのは妥当かもしれません。
ここで論じる話ではありませんが本来は所得水準もそれに合わせて上がっていなければいけないはずなのですが、昨今の所得事情ではどうしても割高に思えてしまいます。
総合評価5
もう、正直「参りました」としか言いようがありません。
実用性とか抜きにスポーツカーが欲しいというのであれば、なんの躊躇もなくお勧めできるクルマです。
また、世界的に3ペダルMTのスポーツカーが消滅する中、AT車の比率が95%を超える日本で頑なにMT車をラインナップし続けるマツダには頭が下がる思いです。
正直なことを言うと無理やりNB型からNA型に近づけようとしたNC型の腰高なデザインに落胆した身としては、ND型の噂を聞いてもなんの期待もしていなかったのですが、いざND型が出てみるとその大胆な変貌ぶりに驚き、実際に乗ってみて旧車好きの筆者ですら「21世紀の名車になりうる」と思わせる物がありました。
20年ほど前もはやいつ倒産してもおかしくないと言われていながらも、儲かる物ではないスポーツカーを作り続け、いつしか唯一無二の文化と世界観を構築する形でプレミアムブランドとして蘇ったというのは日本車メーカーでも稀有な存在でしょう。
いずれ復活するであろうと噂されているロータリーエンジン車にも期待したいところです。
満足度評価 【ロードスターSレザーパッケージ】 |
総合評価 | ★★★★★ | |
---|---|---|---|
外観 | ★★★★★ | 乗り心地 | ★★★★★ |
内装 | ★★★★★ | 安全装備 | ★★★☆☆ |
エンジン | ★★★★★ | 燃費 | ★★★★★ |
走り | ★★★★☆ | 価格 | ★★★★☆ |
今回試乗した【ロードスター】のスペック | |||
---|---|---|---|
車名 | ロードスター | メーカー名 | マツダ |
グレード名 | S Leather Package (MT) | 発売日 | 2018年7月26日 マイナーチェンジ |
車両重量 | 1020kg | 全長×全幅×全高 | 3915×1735×1235mm |
乗車定員 | 2人乗り | ホイールベース | 2310mm |
排気量 | 1496cc | 最小回転半径 | 4.7m |
駆動方式 | FR | 最高出力 (kW[PS]) |
97[132]/7000 |
ミッション | 6MT | 最大トルク (N・m[kgf・m]) |
152[15.5]/4500 |
燃料 | ハイオク | エンジン | 水冷直列4気筒DOHC16バルブ |
JC08モード燃費 | – | 型式 | 5BA-ND5RC |
現行モデル発売 | 1998年1月~ [4代目] |
タイヤサイズ | 195/50R16 |
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