ジープ・新型ラングラー試乗レビュー 4WDには二種類しかない、それはジープかジープ以外の4WDか(1/6)
今回、ご紹介するクルマは去る2018年11月にフルモデルチェンジしたクライスラーのSUVジープラングラーです。
世界中にSUVにカテゴライズされるクルマは星の数ほどありますが、ジープほど知名度の高いクルマは他に無いでしょう。
日本では年配の人の場合「四輪駆動システム」自体が「ジープ」だと思っている方もまだまだ多いのではないでしょうか?
ある芸能人の方は愛車の「メルセデスベンツゲレンデヴァーゲン」の事を、テレビ番組内で「ベンツのジープ」と紹介していたという話もあります。
筆者が子供の頃読んでいた自動車図鑑ですら「スバルレオーネ4WD」の事を「乗用車型のジープ」と紹介していた記述を見たことがあるので、ある年代までは日本では四輪駆動車自体がジープと認識されていた事がうかがい知れます。
後述しますが、日本で1998年まで販売されていた三菱ジープは、当初ジープを製造していたウィリスオーバーランド社(後にクライスラーが吸収)からライセンス契約を結んで国産化したものです。
今回試乗したのはベーシックグレードとなる「アンリミテッドSport」です。
「キープコンセプト」という言葉がありますが、これほどまでキープコンセプトという言葉が相応しいモデルチェンジも無いでしょう。
第二次大戦中にアメリカ軍に制式採用されていらいの基本デザインを変えない当たり、もはやオフロードのモーガンと言っても良い趣かもしれません。
ジープのCIでもあるガイコツグリルは勿論、ボディから独立したフェンダー等1940年代から基本デザインは今に至るまで一切変わっていません。
とはいえ、年々厳しくなる衝突安全基準に対応すべくフェンダーやバンパーは樹脂製となり全体的にRが多くなっていますが、それすら誤差の範囲に思るくらいです。
なんと、ヘッドライトは今なおΦ180mm丸型の規格サイズのセミシールドビームH4ハロゲン(!)です。
かつてアメリカでは破損しても容易に修理交換が可能という理由でシールドビーム式と呼ばれる同一規格のヘッドライトを使用する事が義務化され、その義務のない国でも北米が最大の輸出市場であるため、実質その基準に準拠していた事があります。
現在ではその基準はありませんが、ジープというクルマの性格上、出先でヘッドライトを破損した際に入出と交換が容易に行えるセミシールドハロゲンを使用するのがジープの流儀なのでしょう。
ちなみに旧型は昔ながらのレンズカット入りのHELLA製ガラスレンズを使用していて仰天しました。
それでも、上位モデルではこの形状のままLED仕様になるのが、またなんとも今時のクルマらしいところです。
流石に昔のようにフロントウィンドーを前に倒してドアまでフループンというわけにいかないのは、時代の流れでしょう。
現在は前後ドアを残してリアクオーターから後ろと頭上がオープンになる構造になっています。
今回は4ドアの試乗車ですが、他にもよりオリジナルのデザインに近い2ドアもラインナップされています。
やはり、どんなに時代が変わってもこの背面タイヤ式のスペアタイヤはジープのアイデンティと感じるのですが、世界中のSUVがこの背面タイヤを模倣するというあたり、何かしら合理的理由があるのだとしてももはや、ジープというブランドを超えて自車がSUVであることを示すアイデンティティのような物なのかもしれません。
ジープを見るとヒンジやキャッチがボディむき出しになっています。保安上の心配をされるからもおられるかもしれませんが、持ちろん外側からネジを緩めることは出来ない構造になっています。現在の基準ではありえない話ですが、元々は軍用車というすべてが合理性優先のシンプルさで、いざとなれば出先で最低限の工具で直せるクルマでなければならないというジープだからこそのデザインでしょう。むしろ独特の美学すらそこにあるように思えてきます。
フロントスクリーンガラスを見るとこんな遊び心も・・・どうやらアメリカ人にとってジープはただのSUVとかクロカン車に収まらない思い入れがあるのでしょう。
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