ロードスターに限らず、最近のマツダ車は「所有する悦び」をくすぐるクルマが増えたものだとつくづく思います。
ことスポーツカーにおいてはスピードや見た目のスタイリングはもちろん「スポーツカーを所有するプレミアム感」というのがあるからこそ、自動車としては不便で非効率なクルマを所有する魅力があるのではないでしょうか?
他のメディアでも友人との会話でも筆者がよく話すのが「こんな色気のある国産車は見たことがない」と。
先日、某局でトヨタ2000GTをめぐるファンタジードラマが放映されカーデザイナーの主人公がトヨタ2000GTのデザインを「セクシーカーブ」と称していましたが、ここまで官能的なデザインの国産車はトヨタ2000GT以来ではないでしょうか。
赤みの強いブラウンの本革内装がなんとも言えません。
昔はこういうワインレッド系の内装にして「場末のキャバクラ」と称されるような内装になってしまうケースもありましたが、ロードスターにはそういった国産車特有の「バブル的価値観の高級」にとらわれることなくスマートに纏めているあたり、この10年くらいのマツダ車の内装のセンスの良さには目を見張るものがあります。
NAのシンプルさを好む人にはラグジュアリーGTが強くなったND型は意見が分かれる所かもしれませんが、高めのセンタートンネルと短いシフトレバーがこのクルマをスポーツカーであることを意識させます。
年々厳しくなる衝突安全基準の関係で着座位置が高く、腰高に感じるクルマばかりになってしまった昨今、ドアを開ければ地面に手が着くローポジションを実現しているだけでもロードスターは稀有な存在です。
勿論、このクルマにそれを求めること自体が野暮な話ですが、ソフトトップを上げた状態でのヘッドスペースは期待できないのは言うまでもありません。
しかし、使い古された言い回しですが、スポーツカーにはむしろ、こういう適度な狭さが必要なのも事実です。
よく、スポーツカーに乗ることを「着る」と表現しますが、まるで激しい動きにも体にしっかりフィットするスポーツウェアのようなタイトさです。
でも忘れてはいけません、そうこのクルマはその名が示す通り車体の形態はロードスター(二座席オープントップ車)です。
幌を降ろせばこの通り、この解放感。
このオープンエアを二人だけで独占できる・・・なんとも贅沢なクルマです。
嗜好品としての自動車以外に用途の無いクルマを商品としてラインナップする、一銭たりとも無駄にできない営利企業としては勇気のいる事でしょう。
レザーパッケージとRSグレードにはシートヒーターが装備され、真冬にシートヒーターで暖まりながらオープンエアを堪能するという、「暖炉にあたりながらアイスクリーム」のような贅沢なクルーズも愉しめます。
インパネ周りは往時からのスポーツカーの流儀に則り、T字型スポークの小径ステアリング、メーターは指針式の独立丸形メーターを採用、目盛0で針が真下を指すレイアウトがドライバーを特別な気分にさせます。マツダ製スポーツカーの伝統的レイアウトで大型のタコメーターを中心にセット、タコメーターの針が真上を指すとちょうどピークパワーの回転域を示す形になっています。
今や世界的にスポーツカーが2ペダルセミATに移行する中、AT大国である日本のディーラー試乗車でMTがあるというクルマもそうそうないでしょう。
アクセルペダルは通好みのオルガン式、独特の踏みごたえですが、かかとを支点にしてつま先のタッチで微調整が出来るため、ミリ単位のスロットルコントロールがしやすい、高速クルーズが楽という理由で好む人も居ます。
流石にペダルの作り自体にまではコストをかけられなかったようですが、ここはオーナーの好みでオプション(MT車用アルミペダルセット取付工賃含む22,536円)もしくは社外品のアルミペダルを装着すればし好とすべきかもしれません。
ではいよいよお楽しみ、マツダロードスターの試乗レビューです。
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